これまでの常識が通用しない、初音ミクムーブメントをつくった世代
DTMが個人にも普及してきた頃、
いかにヒューマニックな打ち込みをできるかに時間を費やしたものです。
なぜなら、音楽は人間による演奏がスタンダードなもので、
その揺らぎやズレが“グルーブ”となり、
ある種の心地よさや熱気、はたまた、やすらぎなどをそこに感じてきたので、
機械的で無機質なビートには、“違和感”を感じるからでした。
しかし、そんな「音楽的常識」にはとらわれない世代が、
2010年頃から初音ミクブームをつくってきました。
機械的なビートは、80年代のテクノブームの頃からあるのですが、
それはあくまで、バックの演奏だったり、
インストゥルメンタルミュージックに限られてきました。
しかし、ついにメインとなるボーカルが
コンピューターに取って代わったのが初音ミクです。
このボーカル・アンドロイド(ボーカロイド)が、
人間が歌う曲よりも人気を博すなんて誰が想像したでしょうか。
初音ミクムーブメントの中心は、
10代~20代前半の世代です。
いわゆる、小さい頃から、
打ち込み系音楽を普通に聴いてきた世代。
つまり、ずっと平坦でベロシティーが同じ、
抑揚のない音楽にまったく違和感を感じない
(むしろそれがスタンダードな)新しい世代なのです。
その跳ね返りなのか、初音ミク曲は、
変拍子やリズムが複雑なプログレチックな楽曲が多いようです。
昔はヒット曲の方程式として、
カラオケで歌いやすいように、
「覚えやすくて泣けるメロディーと歌詞を!」
などと言われていましたが、
初音ミク曲は、
「難しいメロディーに言葉数が多く難解な歌詞ゆえ、カラオケで歌いたい!」
というニーズに変化しているのです。
そして、流通(ビジネス)モデルとしても、
ネットインフラの整備が進んだことによって、
従来の芸能事務所、レコード会社、ディストリビューターという、
これまでの流通モデルが激変し、
“個人”が発信の主軸となったことも大きいですよね。
これまでの音楽的常識や、
ヒット曲を生み出す方程式、
既存のビジネスモデルの転覆
・・・など、音楽の激変期の最中にいる私たち。
これからの音楽変遷史はどうなっていくのでしょうか?