先行音、先取音ともいわれ、次の2種類に分けられる。
①メロディック・アンティシペーション
後続するコード(和音)のコード・トーンを前のコードの最終拍にノンコード・トーンとして先行させたもの。先行した音は後続するコードの冒頭で同音で繰り返され、コード・トーンとして解決する。このタイプのアンティシペーションは、メロディ・ラインを装飾するものとして古くから多用されている。
②リズミック・アンティシペーション
後続するコードの音が前のコード内に先行する点では①と同様であるが、単なるメロディーラインの装飾にとどまらず、その部分のコード・サウンド自体を先行させるもの。リズムに乗ったドライブ感を作るためのシンコペーションによるメロディの変形がコードの分岐点で行なわれたもので、ジャズ、ロック、ポップスなどいずれの分野でも効果的に多用されている。先行音にはコード・トーンのほかテンション・ノートが使用されることもあり、通常、8分音符以下の短い音符(ときには4分音符)で示され、これらの音程はアクセントによって強調されることが多い。