再生音の音場で、音源の方向、音の聴こえてくる方向を指す。モノラル再生では、音はスピーカーの方向(および多少の上下感を伴う場合もある)から聴こえ、定位方向はひとつである。ステレオ再生では左右スピーカーの音が空間で合成され、通常、左右スピーカー間のどこかに定位する。ステレオ再生で、音がある位置に定位する条件としては、左右スピーカーからの音量差、時間差、位相差などがある。これらを意図的に操作することで、左右スピーカー間以外の場所に定位させることもある程度可能であり、小型ステレオやテレビ音声の臨場感拡大装置に応用されている。アンビエンスもこの一種である。サラウンドなどで、リスナーの背後にもスピーカーを置いた場合、理論的には音は背後にも定位することになるが、人間の耳は前面の定位感については敏感でも、背後についてはそれほどではないため、あまり明確な定位は得にくい。定位には音の到来方向(角度)ばかりでなく、距離感も含まれる。しかし、そもそも「人間はどうやって距諡感を感じとっているか」が理論的に解析しつくされていないため、再生音場への応用は未だ研究段階である。