非和声音のうち,テンション・ノートとしての音価を持たない装飾的隣接音を指す。アプローチとは「接近する」という意昧で、コード・トーンに順次進行する短い音符によるノン・コード・トーン(非和声音)がアプローチ・ノートとなる。アプローチ・ノートには音階音(スケール・ノート)に限らず,半音進行などにみられるような音階外音も使用され、また、ふたつ以上のアプローチ・ノートが連続してコード・トーンを装飾することもある。このようなアプローチ・ノートへのヴォイシングには種々の手法がみられ、コード・サウンドとは異なるアプローチ・コードが構成される。これらのアプローチ・コードは、その直後のコード・サウンドにスムーズに連結する何らかのつながりを持たなければならない。具体的なアプローチ・コードの設定は、次のようなアプローチ手法によって処理されている。
クロマティック・アプローチ
半音によるメロティーラインの結びつきを利用して、コード・サウンドの半音上または下の平行コードを設定するもの。
ドミナント・アプローチ
コード・サウンド部分へのドミナント・モーションを応用した処理法で、指定コードに対するドミナント7thコードをアプローチ・コードとする。この場合のアプローチ・コードの構成には、オルタード・テンション・ノートが加えられることが多く、これをオルタード・ドミナント・アプローチという。また,ディミニッシュ・コードによるアプローチ処理法(ディミニッシュ・アプローチ)は、ドミナント・アプローチの一部に含まれる。
ダイアトニック・スケール・アプローチ
ダイアトニック・スケール上のメロディ・ラインを、ダイアトニック・コードのみによるコード進行の組み立てによってボイシングする手法。コード・サウンド部分には指定コードを当てるが、これと同じ系統のコードに代理させてもよい。アプローチ・コードはコード・サウンドに対する並進行またはその他の機能的な結びつきによって選定されるが、この場合、それぞれの声部にメロディ・ラインの動きに対応したスムーズなつながりを持たせることが求められる。また、アプローチ手法は次のように発展、その応用範囲も広げられる。
ダブルクロマティック・アプローチ
クロマティック・アプローチの連続的な用法。さらには3音連続またはそれ以上の部分への応用もみられる。この時点ですでにコード・トーンをアプローチ・ノート化するという変則性が示されるが、この変則性はクロマティック・アプローチに限らず、そのほかの処理法にも応用されている。
パラレル・アプローチ
クロマティック・アプローチでの半音による平行進行を、全音以上の平行進行にまで発展させた用法。
ダブル・ドミナント・アプローチ
ドミナント・アプローチの連続的な用法。
リーピング・アプローチ
跳躍進行部分へのドミナント・アプローチの応用。この応用は、順次進行に限られていたアプローチ・ノートの原則にとっての例外となる。
ディレイド・リゾルブへの応用
反対方向からのふたつのアプローチ・ノートは、それぞれ異なる処理法によってボイシングされる。このような複合的なアプローチ処理法は、ディレイド・リソルブ以外の音型にも応用されている。