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ダルシマー

欧州では、小さなバチで打奏するチター属の楽器を総称してこういう。その起源は古代ペルシャにあり、そこから東西に伝播した。東欧のツィンバロンが特に有名であり、同族の楽器は中近東でサントゥール、中国で揚琴、夕イでキム・チン、アメリカではハンマード・ダルシマー(ニュー・イングランド地方とアパラチア地方の民謡で用いられる)などと呼ばれる。また、アメリカには打奏するもの(ハンマード)のほかに、はじくダルシマーもあり、こちらはハンマード・ダルシマーと区別してアパラチアン・ダルシマーと呼ばれることがある。アパラチアン・ダルシマーは、ボディとネックが一体化した細長い箱にフレットつきの指板を持ち、3本の金属弦を張ったもので、机やひざの上に水平に置き、ピック(かつては鳥の羽の軸)で演奏する。また、左手で上から弦を押さえる(スライド・バーではない)奏法もある。弦は、奏者側か旋律弦でほか2本が伴奏弦(旋律弦が複弦の4本弦の場合もある)。フレットは全半音揃ってはいないが、伴奏弦を変えることによって短調も含むいくつかの音階が演奏できる。細長い胴体は、くびれて細く伸びた8の字型の場合と、奏者側か太くなっている場合とがあり、前者はアワーグラス型、後者はティア・ドロップ型という。さらに、欧州には、打奏ダルシマーとほとんど同じ形でありながら、羽根や爪ではじいて演奏するスタイルの楽器が古くからあるが、こちらはプサルテリウムの名でしられ、ダルシマーとは区別される。両者は系譜が多少異なり、打奏の系譜はピアノの前身、はじく方の系譜はチェンバロの前身といえるだろう。なお、プサルテリウムは植民地時代にスペインからメキシコに伝わってサルテリーの名で継承されている。

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